相続税の申告を依頼されると有難いことだと思うのだが、その一方で心配することは、遺産分割がスムースにいけばいいなと思うことである。
今回のケースでは、相続人が兄弟二人であったが、なかなか定まらず、とうとう申告期限が来てしまい、やむを得ず未分割のまま申告をすることとなったのである。
未分割のため小規模宅地の軽減が適用できないことから、とりあえず軽減されない税額での申告納税となるし、分割確定後の更正請求手続きでそれは解消されるとしても、税理士報酬はまた発生することになりコスト高となる。10ヵ月という申告期限は長いようでも、こういうケースには短いと言わざるを得ない。
そもそもなぜ決着がつかないのか、もめるのか。先ず第一にそれなりの財産があるからであり、第二には遺言書がないからである。それ以外の要素もあると思われるが、相続人にはそれぞれ家庭の事情というものがあり、たとえ二人であっても意見の衝突はあるのであろう。というか、当事者にはその背後に応援団がついている。これらの集合体の思惑が主張されて折り合いがつかなくなってくるのであろう。
血を分けた兄弟であっても然り、そういう状況を見るにつけ、前に依頼された件では5人の兄弟であったがスムースに分割が行われたものがあった。深い事情は分からなかったが、その事例の場合は長男がリードしてうまく纏めておられたような気配を感じた。また、弟たちもそれに従うという気持ちもあったようである。すこぶる仲の良い兄弟達であり記憶に残った。
とにかく、今回の事案で感じたことは、いずれ決着がつくのではあろうが、10か月では双方のエネルギーが強くまとまらなかったということであろう。
この事例を見るにつけ、相続税のかかる事案が多くなる傾向にあるこの世の中、10ヵ月では纏まらないものも少なからず生ずるであろうと思った次第である。