預かった犬、大騒ぎ

チーズ隣家に娘夫婦が3人の子供と住んでいる。そこに飼われているのがトイプードルの雌犬、名をチーズという。折に触れて当家に遊びに来ているので性格は分っている。チーズは極めておとなしい優しい子である。

夏休み、キャンプに出かけるというので、チーズを一晩預かることとなった。こんなおとなしい犬を置いていくなんて、キャンプ場は室内犬を連れて行けないところなのか。

このチーズは、体格が当家のハナ(ノーフォークテリア 雌)とほゞ同じであるがハナよりスリムである。ハナとの折り合いはもう一つというところであった。

そういう状況にあって、2人が一泊二日を共に過ごすことになったのである。ハナは元来元気が良いというか傍若無人のところがある。相手の性格なんか歯牙にもかけない態度をとるのだ。

果たせるかな、一緒にしてみると、ハナがチーズに攻勢をかける。チーズは唸って威嚇するのだが、ハナは尻尾を振って喜んでいる。チーズに怒られても体を一瞬低くしてかわしながら、また、しつこく纏わりつく。

結局、チーズはタジタジとなって逃げまわることとなったのである。

彼らの世界では出会って暫らくすると序列が決まり、そのグループ内の秩序は安定化すると思うのだが、この二人の場合、今まで何回か一緒になっているにもかかわらず、なかなか安定しないのである。相性が悪いのか、お互い虚勢を張っているのか。

チーズ

チーズにとってみれば、家族と離れて心細いところに苛められて気の毒なことである。

二日目の夕方、一家がキャンプから帰ってきた。帰るとすぐ皆でチーズを迎えにきた。玄関ドアを開ける音にチーズが反応し、声を上げる。子供たちが走り寄ってきた。チーズが抱き着く。チーズを抱き上げる。チーズの嬉しさがほとばしる。

長かった一泊二日、チーズのキャンプが終わった。