居間の窓から外を見やると、ベランダの手摺に何やら動くものがいる。目を凝らしてよく見ると緑色の小さな鳥、メジロである。メジロが二羽手摺を右に行ったり左に来たり、それから植木の枯枝に飛び移ったり、また手摺に戻ったりと、何かを必死に探している風情である。
2月末のこの時期、野山には果実はないだろうし、花にはまだ早く、虫達も少ない頃である。餌を求めてさまよっているのだろう。メジロ達はしばらくそうしていた後、あきらめたのか何処へか飛び去って行ってしまった。
餌を求めて我が家のベランダにきてくれたのに、期待に応えられなかった、このことに何か申し訳ない、そういう気分になってしまったのである。
それで何かないかと周りを見てみると、食べきれないで残っている蜜柑が数個お盆に載っている。そうだ、これをあげてみよう。早速包丁で蜜柑を横に切って上下二つにし、ベランダの手摺の上に置いてみた。
すぐにでも来るかと見ていたが、来ない、なかなか来ないのである。巡回の経路があるのだろう、その日はそれで終わった。
翌日はメジロより先に大柄のヒヨドリが来た。ヒヨドリが蜜柑を啄ばんでいるところにメジロが二羽きたが近寄れない。離れたところからヒヨドリが啄ばんでいるのを見ているだけである。ヒヨドリがなかなか飛び立たないので、あきらめたのかメジロ達は去っていった。蜜柑はヒヨドリに食べ尽くされ、ヒヨドリもどこかへ行ってしまった。
また、蜜柑を切ってベランダの手摺の上に置いた。
その翌日、メジロが一羽きた。今日はヒヨドリはいない、メジロだけだ。メジロはうまそうに啄ばんで食べている。やっとこちらの思いが届いたのである。
一羽だけでの巡回だったのか、別のグループなのか分からないが、家主としては、一応、面目が立った気持ちになれたのである。