今回は、月刊誌「致知」2018年2月号に掲載された「ドラッカーに学ぶ経営の原則」と題するトップマネジメント社長山下淳一郎氏の記事を引いて稿を起こしたいと思う。
ドラッカーは会社経営の要諦をいろいろと教えてくれている。その中で、山下淳一郎氏は「ドラッカーが発した5つの質問」を特に取りあげておられる。1われわれの使命は何か、2われわれの顧客は誰か、3顧客の価値は何か、4われわれの成果は何か、5われわれの計画は何か、である。
1の「われわれの使命は何か」は、わが社がこの社会に存在しなくてはならない理由はどこにあるのか、自社の社会における存在理由を自覚すれば働く意欲が生まれ、その仕事の価値を感じれば、つらいことにも耐えられるというのである。
2の「われわれの顧客は誰か」は、われわれの使命は誰に向けられたものか。誰のお役に立ちたいのか、どういう人を幸せにしたいのか、これが明確でないと使命も薄れてしまう。顧客を明確にすることが重要なのである。
3の「顧客の価値は何か」は、自分たちが売りたいものを押し付けて売るのではなく、自分たちがお役に立ちたいと思っているお客様は何を望んでいるのか、何に価値を感じているのか。
ここで、富士ゼロックスの例が挙げられている。富士ゼロックスはコピー機を開発した。売れると思っていたところ、高価だったため当初は全く売れなかった。そのときに経営陣が問うたこと、それが顧客の価値は何か、だったのである。それを突き詰めていくと、顧客が求めていたのはコピーの機械ではなく、コピーだったことに気づいた。そこで、コピー機を売ることをやめて、使った分のコピー代を請求する方法に変えたのである。これにより、富士ゼロックスは一気に飛躍した。コピー機を売らずにコピーを売る、顧客のニーズがどこにあるのかを的確に捉え事業の目的としたケースである。
4の「われわれの成果は何か」は、成果というのは売上や利益のことと想いがちであるが、大事なのはお客様がどうよくなったかである。医者であれば患者さんの病気が治ることであるし、学習塾であれば、生徒が第一志望に合格することであるし、コーチであれば、選手が金メダルを取ることである。そこに気づかなければならないのである。
5の「われわれの計画は何か」は、計画とは、ただ数字を立てスケジュールを組めば良いわけではない。事業を底上げするための目標を立てることだとドラッカーは言っている。喜んでくださるお客様をどれくらい増やすのか、どう増やすのか、そのために人、モノ、金、時間、情報などの経営資源をどうやって手に入れ活用するのか、という目標を立てた上で役割分担し実行していく。計画を実行に移した結果、うまくいくこともあれば、うまくいかないこともあるだろう。それらを振り返り軌道修正を重ねていくことで生きた経営ができ上がっていくというのである。
ドラッカーは「事業の目的とは、顧客の創造である。」と言っている。顧客の創造とは、要するに喜んでくださる人を一人でも多く増やすこと、この言葉のとおり、売上を伸ばすことを目的とせず、いかにお客様に喜んでいただくかを追求していくこと、このことが結果として業績を好転させていくというのである。
私はドラッカー、その教えを普及される山下淳一郎氏のご意見に心底賛同する。2018年の年頭に当たり、ここに挙げた5つのことを、今後の経営や経営指導の基本に置きたいと思う。