中小企業者等が給与等の引上げを行った場合の法人税額の特別控除

企業

所得拡大促進税制は、平成30年度改正でかなりの手直しがなされた。大企業向けと中小企業向けのものがあるが、ここでは中小企業向けのものを取りあげる。

適用要件は二つあり、その一つは、適用年度において全ての国内雇用者(役員及び役員の特殊関係者並びに使用人兼務役員を除く。)に支払った給与等の総額(雇用者給与等支給額)が、適用年度の前事業年度において全ての国内雇用者に支払った給与等の総額(比較雇用者給与等支給額)を上回っていること。もう一つは「継続雇用者給与等支給額」が前事業年度比で1.5%以上増加していることである。

「継続雇用者給与等支給額」とは、前事業年度及び適用年度の全ての月分の給与等を受けた国内雇用者で、その全ての期間において雇用保険の一般被保険者であるものに支給した給与等である(前事業年度及び適用年度の全て又は一部の期間において高年齢者雇用安定法に定める継続雇用制度の対象になった者は除かれる。)。

この適用要件を充足すれば、雇用者給与等支給額が前事業年度を上回る部分の15%相当額(法人税額の20%を限度とする。)が法人税額から控除されるのである。

なお、適用要件の継続雇用者給与等支給額の増加割合が2.5%以上であり、かつ、教育訓練費の伸び率が1.1以上か、経営力向上計画に記載された経営力向上が確実に行われたことの証明がなされた場合は、税額控除率が10%上乗せされ25%となる。

税額控除ができるかどうかは「継続雇用者」の給与等支給額が前年度比で1.5%以上増加したかどうかを前提条件とし、税額控除額は、国内雇用者の給与等支給額が前年度より増加した金額に基づいて算出することとなる。従って、この税制は、給与等の引上げがないと適用にならないということである。

なお、この制度は青色申告法人である中小企業者等の平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する事業年度に適用される。

そもそも、この制度はアベノミクスの腰折れを懸念して創設されたものあるが、企業が従業員の給与を上げることによって消費の拡大につなげようとするものである。今回の改正で、前年度、本年度の全ての月分の給与等を受けたいわゆる継続雇用者の給与等支給額が前年度比1.5%以上とするという条件を設けた。このことはベースアップか定期昇給などを求めているのである。アベノミクスを更に強力に推し進めようとする気持ちが表れている。