猫、愛い奴なれども

まるまる我が家には3歳の去勢猫のマルがいる。マルは、生まれて間もない頃、彷徨って我が家の玄関付近に辿り着き、鳴いているところを娘が拾い上げ、そのまま居着いてしまったのである。

その頃我が家には、昨年死んだノーフォークテリアの盲目の老犬チャーリーがいた。マルは子猫であるが故か、チャーリーが盲目であることを理解せず、ちょっかいをだし、それにチャーリーが対応できずウロウロしていると、更に攻勢をかけ、猫パンチで苛めるというようなことをしていたのである。

私はこういう状況の理不尽さに憤り、そういうときのマルを叱って追い払ったりしていた。マルはその都度、全力で走って逃げるという始末であった。それによって、いつしか私はマルにとって恐怖の対象となっていったのである。

まる

その後、マルは大人になった。盲目犬チャーリーが他界したときは、マルは何かを察し、横たわるチャーリーの顔を覗き込んだりしていた。この頃にはチャーリーはマルにとって良い遊び相手となっていたのである。私もマルを叱ることもなく穏やかに接していた。

まるしかし、三つ子の魂百までと言われるとおり、子猫の刷り込み現象は残り、マルとの関係はこのままずっと固定されていくのだろうと思い込んでいたけれども、最近変化がみられるようになった。マルが近寄ってくるようになったのである。私が洗面室にいるときに洗面台に飛び乗って口を蛇口に近づけ、私の顔をみて水を出すのを催促するようにもなった。喉が渇いて仕方ないとしても、嫌いな奴に催促することはないだろうと私は解釈したのである。

もとより、マルに対して極力優しく話しかけ、頭や喉をなでたりしてはいたのであるが、そんなことが、マルの頑なな感情を少しずつほぐしていったのであろうか。そういうことで、私とマルとの関係は頗る良好となった。

そういう関係になって喜んだのは良いが、ちょっと困ったことも出てきた。マルが私に体を擦りつけるようになったのである。これは関係改善の当然の流れであろうし、このこと自体悪いことではない。しかし、服に毛が付くのである。その都度、コロコロで毛を取ることになった。親愛の情を示せば示すほど厄介になってくるのである。外出するときは毛が付いていないか常に気にするようになった。

敬遠されていたときは何ともなかったことが、濃厚な関係になるとこういう不都合なことも出てくるのである。

喜ぶべきか、否か・・・。まあ、喜ぶべきことであろう。メデタシ、メデタシ。