アベノミクスと雇用者給与増加減税

消費

アベノミクスがなかなか実感できないことの要因に消費の低迷があげられる。消費を喚起するには給与を増やさなければと、政府が財界に働きかけたりしたところであるが、税制においてもそういう後押しの制度が講じられている。法人が給与を上げたり、雇用を増やしたりすると法人税負担を減少させる制度である。

給与が増加したら増加額の10%を法人税から控除するというものであるが、給与を上げるということは、資金が会社の金庫から出ていくことであり、その出て行った金額の1割が税負担の減少という形で金庫に戻ってくる仕掛けである。9割が出っ放しということを経営者はどう考えるか。税負担が減少するから給与を増やそうと考える経営者はどのくらいいるのだろうか。

経営者がコストとして考えるのは、生産性の向上につながるかどうかということが一番で、次が分配率の問題、その次が福利厚生としての性格を考えるかどうかではないだろうか。

税負担の軽減額の計算の骨格は、適用年度の給与が平成24年度に比しどの程度増加したかということであるが、増加している場合でも前年度と比較して増えていることが条件となっている。つまり、増え続けることが必要なのである。また、税額控除の割合が10%から平成29年度以降分については22%に引き上げられたが、これは、アベノミクスの腰折れを懸念する政府の切羽詰まった気持ちが現れているようだ。歳入が減ってもよいから給与を増やして欲しい、そういう強い気持ちが現れた税制である。